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surf columnSURF COLUMN 2016/8/3

 

岡崎友子
パタゴニアサーフィンアンバサダー。
海の前で生まれ育ったが、16歳でウインドサーフィンを始め、大学に入ってからマウイに通い、90年代にはウエイブ年間ワールドランキング2位、その他入賞多数。ウインドサーフィンの他にもスノーボード、カイトサーフィン、サップなども初期の頃から世界の情報を日本に紹介している。
現在もマウイをベースにカイトサーフィンとサップを中心に風と波を追いかけながら旅を続け、インスピレーションをもらった人たちや場所、出来事について記事を投稿したり、ツアーやイベントで自然と向き合える経験をシェアする活動を続けている。
1回目 2016/6/1 『Blowin’ in the wind (風に吹かれながらの旅生活)』
2回目 2016/6/15 『道具を智恵と技術におきかえて』
3回目 2016/7/20 『The Wave I Ride 自分らしい人生の波に乗るために』
4回目 2016/8/3 『Words of wisdom 師から頂いた言葉』

『Words of wisdom 師から頂いた言葉』

16歳でウインドサーフィンを始めてから、
いや、おそらく子供の頃家の前の海で遊んでいた時から、
海は私がもっとも素直に全てを受け入れられる学びの場でした。
親や教師だとつい反発したくなる気持ちも海に厳しく諌められたり、
コテンパンにやられても反発どころか一瞬にして自分に謙虚さが足りなかったことを認め、
しっかり教えを学び取ろうと真剣に海の言わんとすることに耳を傾けようとしていた気がします。
海、山、そして私の周りの自然はいつも私の学校であり、
そこにはいろんなスポーツで出会ったマスターたちという
素晴らしい師が私を導いてくれる役目を担って存在していました。
未だにちょっとしたきっかけですぐ夢中になり突っ走りがちの私ですが、
尊敬する師から頂いた一生大切にするだろう言葉、
ふと冷静になり、何が大事か再確認するための言葉が幾つかあります。
それらの言葉は本当にいいタイミングでふと私の頭に浮かんできたりするんです
。そして突っ走りかけていたり、頭がパンパンになっているときに、
フーッとガスを抜いてくれたり、クリアなラインどりを見せてくれたりします。

私が今まで生きてきて最も恵まれていたのは
何をやってのその道のベストの師に出会えたことだと思っています。
それは海の中だけでなく、スノーボードも文章書き、水着などのデザインにおいても
全てにおいてこの人に叶う人はいないと思えるような人が目の前に現れるのです。
海に関して、ジェリーロペス師ほど私に影響を与えてくれるサーファーはいないでしょう。
スキルを教えてもらうだけでなく、人生観、
そして人に対する態度や自然との対話の仕方、そして彼の場合海の上でのかっこよさ、
マナーと海から上がったときと何も矛盾せず全く同じスタンスで生きているのです。
マウイに行き始めた頃彼もマウイに住んでいてウインドサーフィンに夢中な頃でした。
ジェリーおじさんとして慕われ、マスタークラス(おじさまクラス)で常に優勝を争う存在でした。
パイプラインというサーフィンで言ったら聖地とも言えるスポットで
彼は神様のように崇められ彼のようにあの波を乗れる人はいないと言われ、
ハワイとジェリーは切っても切れない関係を持っているように思っていました。
あんなにサーフィンが上手で好きなのに、ハワイ以外のところにまさか引っ越すなんて?
彼が20年ほどまでオレゴンの山の麓の小さな町ベンドに引っ越した時そう思った人は少なくないはず。
私も実際半信半疑、だって私なんてマウイの中でも海から30分かかるエリアには
海に行くのに時間が借りすぎて住む気になれないほどだったから。
いろんな理由があったに違いないけれど、
ジェリーさんは全く寂しそうではなく、オレゴンの新しい生活を思い切り楽しんで入るように見えました。

何年か前久しぶりにオレゴンのお宅にお邪魔した時も
パウダーが降れば誰よりも早くそれを滑りたくて
待ち合わせ時間よりずっと早くに来てオープンする前からリフトに並び、
私たちがきたら、「おーいこっちだよ、遅い遅い」と少年のようだったし、
滑りは力の入らないスピーディーなスタイルで、
「あ、そうかこの人がここでやってること全て全くハワイと変わらないんだ」と
実際見てやっと理解できるようになりました。
私は昔から見知らぬところにあこがれて、
そういうところに行きたいという気持ちに突き動かされるように生きてきました。
海に関しても「どこどこにはいい波があるらしい。どこどこはまだ誰も知らない、
どこどこは混雑一切なくて雰囲気がいい」といろんなところの情報にアンテナを巡らし、
行きたいところが山ほどあります。
ジェリーさんと話している時も、
世界中を旅し有数のサーフスポットを開拓してきたジェリーさんの話に夢中で、
そして自分に良さそうなのはどこか聞きたくて質問攻めにしていました。
もちろん彼は丁寧に、にこやかにいろんなことを話してくれました。
そこにいた私たち3人が帰る時、
それぞれにメッセージを書いてくれたのですが、私のにはこう書いてありました
『Surf is where you find it」
今やその言葉は彼の著作のタイトルにもなっているので誰もが知ってる言葉ではありますが、
その時初めてその言葉をいただいた時、私はハッとしてとても恥ずかしくなりました。
波の良し悪しが自分のサーフィンをよくするわけではない。
いい波にたくさん乗れたからといってサーフィンの真髄を理解できるわけでもない。
どんなところでもどんな波でもどんな環境でも波乗りの良し悪しは自分次第、
「いい波はどこにでも自分次第で目の前にあるのだよ」とさりげなく、
でも一番大切なことを忘れてはいけないよ、と諭された思いでした。
サーフィンだけではありません。
幸せも自分次第でいつでもそこにあるもの。全てがまさに自分次第。
心の向け方さえ変えればどんなことでも自分にとって素晴らしい価値が出てくる。
ジェリーさんはサーフィンを通して人生に必要なことを学んでいくことを
Surf realizationと呼んでいますが、まさに彼は海を通して悟りを開いたようなオーラがあります。
まだまだ煩悩にまみれ、あっぷあっぷショアブレイクで巻かれ、変なカレントに流されたり、
セットが来るのを見てあせったり、巻かれる前からビビってパニックしそうになったり、
ラインナップで周りが見えなくなったり、いい波を選ぶ自信がなかったり、と
普段の生活でも海でもまったく悟りどころではありませんが、
必要な時に頭に浮かんでくる先輩方や海からの言葉は大事にして、
自分の進んでいく道がずれていかないような指標としていきたいと思っています。
サーフィンというのはただ波に乗るという行為ではなくその人のway of life、 生き様だと思います。
自分次第でいい波に乗れる、自分次第でいい人生を送れるのだから、前向きな選択を心がけたいです。
今まで素晴らしい波に乗せてきてくれた。
板をプッシュしてくれたり、カレントを教えてくれてきた先輩、仲間、家族、そして偉大なる自然に感謝して。
ありがとうございました!


子供とのタンデム
下半身が動かなくてもパドルスポーツを熱心に頑張ってる8歳のダイブ、
多分強かったと思うけど私を信頼してくれてテイクオフした彼の初めての波。
二人で乗ったこの一本は私のその夏のベストウエイブでした。
photo Kurebayashi


手付かずの湾、波がなくても鳥の声と上に広がる空だけでめっちゃくちゃ気持ちよくなれる。
スタンドアップは波がなくてもマインドサーフさせてくれます。
photo Char 


文字通りグラッシーウエイブ、鏡のような波。朝日に輝いてる自分が映ってうっとり。


北海道最果ての川を横切ろうと橋を渡った時、
あまりの美しさに思わず車を止めていたを下ろし、大急ぎで漕いで行った。とっても豊かな空間。


Riding frozen wave 新しいサーフスポットで凍ったビッグウエイブ開拓中 Portage Glacier ALASKA
photo Hiroyuki Yamada 


ただただこの地球にいること、この瞬間この場所に居られることに感謝。
そういう瞬間をこれからもたくさん経験したい。
photo Pedro Gomez


surf column岡崎友子
1回目 2016/6/1 『Blowin’ in the wind (風に吹かれながらの旅生活)』
2回目 2016/6/15 『道具を智恵と技術におきかえて』
3回目 2016/7/20 『The Wave I Ride 自分らしい人生の波に乗るために』
4回目 2016/8/3 『Words of wisdom 師から頂いた言葉』
 
 
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