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 COLUMN
skate columnSKATE COLUMN 2008/6/4  
石井“CB”洋介
1978年生まれ、浦和レッズと野菜と牛乳が大好き
ヘッシュなスケートチームの4SIGHTをサンフランシスコでスタートさせ、スケーターのためのセレクトショップHESHDAWGZ(ヘッシュドウグズ)を展開している。
サンフランシスコとの太いパイプを持ち、ジョン・カーディエル、ジュリアン・ストレンジャー、ビッグフット、ジム・シーボー、トミー・ゲレロ等にCBの愛称で親しまれる。
http://www.4sightsf.com http://www.heshdawgz.com
http://heshdawgz.seesaa.net/
1回目 2008/5/21 『こんにちは』
2回目 2008/6/4 『ゲットー・ライフ』
3回目 2008/6/18 『STAY POSITIVE』
4回目 2008/7/2 『褒めましょう』

『ゲットー・ライフ』

みなさん、こんにちは。とっつあん坊やのCBです。
最近は雨が多いですね。最近なかなかスケートに行けませんが、僕が以前住んでいたサンフランシスコからアーティストのBIGFOOTが来日していました。彼の作品はアイパスやラサリブレといったブランドや、日本でも渋谷原宿エリアであれば彼のグラフィティーを随所に見られるので知っている方も多いかと思われます。彼は半分仕事、半分バケーション、という感じだというので180cmぐらいあるBIGFOOTを3日かけて作ってもらい、僕のお店、HESHDAWGZ(http://www.heshdawgz.com/)に今日から展示してあります。とても迫力ある作品なので原宿まで来た際は是非見に来てほしいです。

さて、せっかくなのでサンフランシスコの話にします。なんかサンフランシスコと言えばスケートボードや今流行のピストバイクの影響でお洒落なイケてる街っぽいですが、それでは僕が6年以上過ごしたリアルなサンフランシスコが闇のままなので、それらフレッシュなことは無縁のハンターズポイントというエリアの話題にします。

はっきり言って観光で来たぐらいでは絶対に足を踏み入れないであろうサンフランシスコでも1,2を争うゲットー・エリアです。一見すると単なる住宅街なのですが、住民の8割以上は低所得者でアフリカンアメリカン系(黒人/ブラザー)の人達が多く、それ以外はメキシコ人か中国人でしょうか。ハンパなくワルいです。そうです、ギャングスタ映画のあれです。金、女、車の3つが彼らのステータスでしょう。ヒップホップ系のミュージックビデオを見れば必ずと言っていい程この3点セットは登場しますよね?まず、このエリアの多くの男達は定職に就いていません。天気が良い日になれば昼間っから野郎共はまず洗車です。日本ではなかなか見る事が出来ない異様にデカいポンコツのアメ車を、上半身裸で葉巻を加えながら熱心にホイールまで隅々と掃除をしている姿があちらこちらで見かけられます。金はないがどれだけ金を持っているように見せるか?どれだけギンギラギンに見せるか?が大事なんでしょう。近藤”マッチ”真彦もさりげなくやっている場合ではありません。これでもか!と言った感じにやるのがブラザー流です。洗車が終われば車はガソリンを垂れ流して走ってそうな燃費の悪いアメ車に安物のウーハーを搭載し、音が割れすぎて何も聞こえてないんじゃないかぐらいの爆音でゆっくりとブラザーに挨拶しながらエリアを徘徊。たまにキュルキュルキュル~、ドゥォ~ンと、アクセルべた踏みのロケット発射をして“ワ~ォ!オレもあんなにワルくなりたい!”と指をくわえて羨むキッズ達に背中で不良の生き様をアピールします。夜になれば近くのリカーストアー(酒屋)に葉巻の紙やビールを買いに来る者や非合法なブツを売買する者でなぜか人が集まり、近寄りがたいエリアになるわけです。

1人で歩くのは危険でしたが、仕方なく歩かなければ行けない日もありました。すると50はとうに過ぎた歯の溶けた近所のおばちゃんが“ねぇ~、ワタシとデートしな~い”と小遣い稼ぎに近づいてきたり、超コワいブラザーが“$2貸してくれよ~”と話しかけてきてはかつあげされそうになってました。家の玄関から僕をかつあげしようとして母ちゃんに見つかって、耳を引っ張られて家に連れ戻された奴なんかもいました。さらには僕の家の3m手前でCONSOLIDATEDの丸山晋太郎と2人組のブラザーに拳銃を向けられ“持ってるもの全部出せ“なんて言われて、所持金を取られた苦い思いでもあります。アジア人のとっつあん坊やがこのエリアを歩いていようものなら、ハイな彼らにとっては僕はとっつあん坊やでも人間でもなく、カモとしか見えなかったんでしょう。さすがは常に目を赤くしているだけはあります??
なぜ、そんなやんちゃな奴らの住む場所に住んだのかと言いますと、他のエリアに比べて家賃が断然安く、僕にとっては黒人の本能で動く様は興味深くて仕方がなかったからです。

この近くを走る市営バスに乗ると、音が割れまくっているラジカセを肩に担いではヒップホップでノリノリで登場し、うるさいなぁ、怒られないのかなぁ、他の乗客もみんな聞きたいわけじゃないだろうに、、、なんて思っていると、他のブラザーが“お~い2PACかけろよ~”なんてリクエストが出たりしてズルッと拍子抜けした事もありました。(この期に及んで2PACを聞きたいなんてどこまでワルくなりたいんでしょうか、、、。)老夫婦が家に帰るのが待ちきれないのか葉っぱを仲睦まじく共同作業で砕いたりしているのも見ましたね。バスの中でですよ?毎日がカルチャーショックでした。アフリカンアメリカンのカール・ワトソンでさえも僕に“なんであそこに住んでるの?クレイジーだよ。僕は住みたくない”って言われた事もあったっけ。僕の友人が近所のブラザーに”無性に葉っぱが吸いたくてしょうがないんだけど金が無いからコレを担保に$20貸してくれ”と言われて拳銃を担保に渡された、なんて話も聞きました。もう滅茶苦茶です。無法地帯とはこのことか?しかしそんな理性よりも本能が先にきちゃう様な彼らが、僕は好きではないけど嫌いではなかったみたいなんです。

そしてあんなに酷い目にもあったのに良い体験だったなぁ、なんて思ったりしてます。

SEX, HOOD,SKATE,AND VIDEO TAPE
この文章を読んで仮にも興味を持った壊れている方は、IAN REIDの“SEX, HOOD,SKATE,AND VIDEO TAPE”というDVDをおススメします。向こうの面白いカルチャーが満載です。もちろんスケート映像もたくさん入ってます。(http://www.youtube.com/watch?v=zM_xNF6kIFM)

最後に、このハンターズポイントには実はTHRASHER,SLAP,JUXTAPOZを発行しているHIGH SPEED PRODUCTONS社やTHINK, VENTURE, CITY, HUBBAを抱えるSTREET CORNER社があります。僕がやっている4SIGHTもこのハンターズポイントから発信していた時期が長く、実はこのゲットー・エリアはスケート業界にとって超重要エリアなのかもしれません。書いていくとどんどん脱線していきそうなので今回はこのあたりで。それではまた次回。

注)ここの文章に登場してくるブラザー達はあくまでも僕のご近所さん達だった人なので(と言ってもほとんどは面識がないのでご近所さんと説明するのがあってるのかどうか、、?)もちろん真面目なブラザーもたくさんいますのでお忘れなく。



skate column石井“CB”洋介
1回目 2008/5/21 『こんにちは』
2回目 2008/6/4 『ゲットー・ライフ』
3回目 2008/6/18 『STAY POSITIVE』
4回目 2008/7/2 『褒めましょう』
 
 
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