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 COLUMN
skate columnSKATE COLUMN 2010/4/21  
FOS
本名はマーク・フォスター
出身はイギリスの北部で、今はロンドンが生活の拠点。
Heroin SkateboardsとLandscape Skateboardsの運営と、
Altamont Clothingのアート・ディレクションを手がける。
1回目 2010/4/21 『Lost in Transition』
2回目 2010/5/19 『CREATING A SCENE -シーンの創造-』
3回目 2010/6/2 『6枚のスケッチ』
4回目 2010/7/7 『外国から見た日本』

『6枚のスケッチ』

現在、AM 2:46。
今から13時間後にはロサンゼルス行きの飛行機に乗る。
LAへ行くのは“One Way or Another”というアートショーに参加するためで、
LAに続いてカンザス・シティー、テキサス州オースティンと合計3会場で
アーティスト兼スケーターによるアートショウが開催される。
移動中や合間を見つけては、なるべく多くのパークで滑るというツアーなのだ。
僕の他に参加するアーティスト兼スケーターは、
Eric Anthony、Todd Bratrud、Greg ‘Pnut’ Galinsky、Ben Horton、Michael Leon、
Geoff McFetridge、Donny Miller、Mat O’Brien、Andrew Pommier、Michael Sieben。
アートショーを宣伝するためではなく、
全てが如何に“なんとなく、コトの成り行きで決まっていくか・・・”
というコトについて書こうと思ったからで、
さらに、そもそも自分がこんなコト(仕事)をしているコトが不思議でもあるからだ。

僕はイギリス北部の小さな町の出身で、
専門学校へ通いながら夏休みには色んな工場でアルバイトをしていた。
ピザ工場や靴工場、家具工場など。
アートに夢中だったが、親父は反対。
親父としては配管工や電気技師など“実用的な”職業に就いて欲しいと願っていた。
でもそんなコトには一切興味がなく、好きなコトと言えば絵を描くコトとスケートだけだった。
「怪獣の絵なんか描いていても飯は喰っていけないぞ」と言われたコトもあったけど、
今では親父と僕の間ではそのコトが笑い話になっている。
それもそのはず、今の僕は、正に怪獣を描いて生計を立てている。
だから、アートショーを開催するためにアメリカへ行けるなんて夢のような話だと自分では思っている。
もちろん自慢しているワケではなく、
イギリスの田舎出身の普通の人なのだから(そもそも自慢なんかできるワケがない)、
こんな風にして生活できているコトは恵まれていると思うし、
この様な仕事に就いた経緯を説明するコトで、
何かを目指している人にとって何らかの刺激になってくれればとの思いで書いている。

最初に手がけたグラフィックはToy Machineのデッキだった。
それまでにも自分で描いたグラフィックを
色んなデッキ・カンパニー宛に送ってみたけど、全く返事がなかった。
下に見えているのは
実は1997年か1998年に僕が描いたToy MachineのArmシリーズのオリジナル・スケッチ。

描いたスケッチをコピーして、コピーの上からスケッチを囲むようにデッキの形を描いて、
あとはToy MachineのEd Templeton宛に送っただけ。
気に入ってもらえたお陰で、シリーズとして発売されるコトになった。

読んでの通り、難しいコトは一切していない。
でも、さすがにEdに電話を架けた時には信じられないくらいに緊張したのは覚えている。
なにせ、何年もスケート雑誌で目にしてきたEd Templetonだったし、彼のアートワークは大好きだったから。
そんなEdが電話越しで僕のグラフィックをシリーズ化するために
色々なアイデアを出してくれたり、指摘してくれていたから、緊張しないはずもなかった。
シリーズを作るに当たって先ずはIllustratorの使い方を覚えるコトにした。
最初の仕事はこんな感じで決まった。
このシリーズが発表されてからも幾つかToy Machine用にグラフィックを描いたものの、
お蔵入りとなり、間もなく自分のデッキ・カンパニーHeroin Skateboardsを立ち上げた。
2001年に開催された日本でのトレードショーでJamie Thomasと出会ったコトが切っ掛けで、
それから3、4年間はZeroのグラフィックをやらせてもらった。
2003年にはもう一つのデッキ・カンパニーLandscapeを立ち上げた他、
Black LabelとRealのグラフィック、
さらにEmericaとのコラボでシューズのデザインを手がけた。
(ちなみに、Emericaから第2段コラボ・シューズが9月発売予定)
その後、Andrew Reynoldsとの出会いから、
AndrewとJustin Reganと一緒にAltamontをスタートさせるコトになった。
Deathwishのロゴも任され、今はBakerのシリーズをデザインしている最中。
カリフォルニアへの引っ越しを勧められているけど、
ロンドン南部が気に入っているから、
ここNew Cross在住のまま仕事を続けようと思っている。
アートやスケート絡みで色んな国へ行くコトが多く、
数年前には大きなイベントが開催された中国へ、
昨年はアムステルダムへ、
その他にもパリやニューヨーク、ロンドンで自分の展示会も開催している。

全ては、一枚の単純なスケッチを送るべき相手に送り、そこからのつながりだった。
当時、スケートボードの倉庫で働いていた僕にとって失うモノは無く、
チャンスだと思って自分の作品を送ってみただけで、それで人生が変わった。
写真を見ての通り、スケッチの周りには落書きなんかも混じっているし、
プレゼンとしては最低かもしれないけど、伝えたいモノは伝わるんじゃないだろうか?
単純なアイデアだし、大した絵じゃない。
でもスケーターとして、
こんなグラフィックをスケボーにプリントすれば面白いだろうな、という自分の思いが相手にも伝わったのだ。

とにかくチャンスを掴みに行く、失うモノはないという気持で。
グラフィックを描いたなら、デッキ・カンパニーへ送ってみる。
Sponsor meビデオを友達と作ったなら、色んなチームへ送ってみる。
ジンでもTシャツでも作りたかったら作る。
小さな会社を立ち上げるのもOK。
事の始まりは何だって小さい。
シンプルなスケッチ6枚をコピーしただけで人生が変わるコトだってあるんだから。


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1回目 2010/4/21 『Lost in Transition』
2回目 2010/5/19 『CREATING A SCENE -シーンの創造-』
3回目 2010/6/2 『6枚のスケッチ』
4回目 2010/7/7 『外国から見た日本』
 
 
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