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skate columnSNOW COLUMN 2014/6/4

 

Ranran.(山下継一)
1972年生まれ。高知県出身、長野県上水内郡在住。
今年、活動15年を迎えた映像作家、mdm productions(旧mental digital movies)主宰。
スノーボード歴22年。今もなお、更に楽しみ続けているスノーボーダー。
代表作品「CRUISE CONTROL」「THE GRAVURE」「LOVING」シリーズ等、
2000年~2009年まででスノーボードムービー13作品をリリース。
Web site:http://www.mentaldigitalmovies.com/
ブログ:Ranran.目線http://www.mentaldigitalmovies.com/blog/
1回目 2014/4/2 『山』
2回目 2014/4/16 『ご縁』
3回目 2014/5/21 『Back to 90’s』
4回目 2014/6/4 『滑り続ける』

『滑り続ける』

横乗り中毒。
これって病気でしょうか?
いえいえ、正常です。
健全な肉体と精神を持ち、一度横乗りの楽しさや気持よさを知ってしまえば、
そうなってしまうのは致し方のないこと。
むしろ、そうならない方が不健全だと思ったりします。
日本にはしっかりと四季があって全ての季節でいろいろな楽しみがあります。
その一つにウインタースポーツがあり、その中の選択肢の一つにスノーボードがあります。
このコラムを読んでくれている皆様はもちろんスノーボードに出会い、
この楽しみに魅了されている方が大多数だと思いますので
僕の話は多少理解いただけるのではないでしょうか?

僕も42年生きてきて人生の半分をスノーボードにどっぷりとハマってしまっています。
人生で一番飽きずに長続きしている趣味です。
なにがそうさせるのでしょうか?
日常生活では絶対に味わえないスピード感、興奮、快感でしょうか?
全てが非日常。
山にこもって毎日滑り、それが日常となったとしてもこの感覚は非日常的な世界です。
この非日常の現実世界でこの感覚を味わってしまったら、この感覚なしでは生きて行けなくなります。
正に中毒。病気です。
あ、病気になっちゃった。
いや、病気のような超正常体とでも申しましょうか。
とにかくやれば分かるし分かればやめられずドップリとハマってしまう。
ハマってしまってからやめなければならない状況に陥ったとしても、
どうにか続ける方法を模索してしまうのではないでしょうか?
もしかしたら、あっさり、きっぱりやめられる人もいるのかもしれません。
いえ、いるとは思いますが逆にそれは僕には理解できません。
そういう人から見れば、これはもう病気なのでしょう。
しかし、このコラムを読むに至っている皆さんは
こちら側の病的にスノーボードを愛しているとみなしてお話を進めましょう。

僕は10数年前、椎間板ヘルニアを発症してしまい、
医者からスノーボードはやめたほうがいいと言われてかなり落ち込みました。
「これは完全には完治しないから一生上手にこいつ(腰痛)と付き合うしかない。
症状が良くなっても今までと同じように滑り続けていたら、同じようにまた発症する。」
結局は『自分で自分の体調を考え無理せずケアしながら滑る』という方法しかなく、
全てのリスクは自分に返ってくる。かなり縛りの入った方法だった。
でも、それでも続けたいと思ったし、やめられるわけがないのだ。
そしてスノーボードをやめるどころか、
今のような活動を始め、いつしか毎日滑れる環境にもしばらく身を置いた。
しかし、家庭を持ち子供もできれば、毎日滑りながら家族を養うのも容易なことではない。
それで結局、いきなりサンデーボーダーに戻ることになる。
ま、そんなことはよく聞く話でよくある話。当然と言えば当然。
生活が整わなければ滑ることはできない。
多少なりともお金や時間は費やされる。
その中でもできるだけ滑りたい。
どうせなら、いいコンディションを滑りたい。
たまにしかないのだから特別な日にしたい。
THE DAYは逃したくない。
それは全てのサンデーボーダーの願い。できるだけそうしたい。
できるだけそうなるには、山にすぐに行ける距離に住んでいるほうがもちろんいいし、
あとはタイミング。
そう試行錯誤しながらこの数年は滑ってきた。
でも、もっと滑りたい。滑り足らない。行き足りない。
スノーボードを、映像制作を追求するうえで、
そういった”足りてない” ”満たされない”ストレスに悩んだりもした。

なんでそこまでして滑りたいのか?
どうすれば滑り続けられるのか?
そんな自分の、いや大人スノーボーダーの永遠のテーマ
「滑り続けるために」
ここ数年、自分の中でのメインテーマが5年ぶりの新作を作るモチベーションとなり
プロジェクトが始まった。
“やり続ける”ということ。
これはスノーボードに限らず、全てのことに通じることだと思います。
自分がコレという好きなことを見つけ、人生をかけて一つのことを追求し、楽しむ。
それは生き甲斐、ライフワーク、いろいろな言葉で表現されます。
それをやることで”お金になるか?”や
”それで食っていけるか?”なんて関係なく、自己の追求。
僕らはスノーボードにそれを見出してしまったようです。
スノーボードバブル期は今よりは多くのプロスノーボーダーが
しっかりとスノーボードで生計を立て、活躍、活動をしていました。
そういうプロに憧れをもって滑っていた人も多かったし、
そういう夢を与えるという意味では、それもまたかっこいい存在でもありました。
しかし今の時代、その当時のようにプロスノーボーダーとして稼ぐのも簡単なことではないし、
現実、家庭を持ってそこを養っていくには厳しい職業となり、一線から退くプロも大勢います。
しかし、それが間違いだとは決して思わないし、
人それぞれの考え方や、人それぞれの”生き方”というのもそこにはあります。
その中で僕は、身体の動く限りずっとスノーボードをやり続け、追求していきたいし、
十人十色の生き方(仕事や環境)の中でお金に関係なく
”やり続ける” ”追求し続ける”という生き方に、一種のカッコよさを感じてしまいます。
幸いなことに僕の周りにはそういう熱くてかっこいい生き方をする仲間が周りにいました。
そんな撮影活動をして行く中で自然と僕の考え、価値観とリンクし生まれようとしている作品が、
今制作中のDVD『In My Life』という作品です。
もともと長野の山の近くで生まれ育った者や移り住んでスノーボードに向き合って生活する者、
そんな5人をフューチャーしました。
人それぞれ、いろいろな考え方や価値観、生き方がある中で、どれが正解というのも人それぞれ。
この5人の生き方も一つのサンプル。
サンデーボーダーだろうが山に住む人だろうが関係なく、
その人その人、それぞれの環境や生活の中でベストな向き合い方を考えバランスをとってやり続けていく。
僕は頂点を極めたヒーローよりも、
上手い下手関係なく、自分に向き合い追求し、続けていく人にカッコよさを感じます。
この映像を見て共感していただいたり、なにか心に響くものがあれば嬉しく思います。
なんて人に言いながら、
もしかしたらこれは、そんな人生の葛藤の中にいる自分自身に向けたメッセージなのかもしれません。
「滑り続けるために」“In My Life”
是非一度チェックしてみてください。
https://vimeo.com/96526847


これまで4回、僕のコラムに付き合って読んでいただいた皆様、ほんとうにありがとうございました。
次のバトンは僕の作品の中でも登場し、僕の住む町の隣町に住む友人。
プロスケーターでありプロスノーボーダー、橋本貴興氏の登場です。
こちらもお楽しみに。

snow columnRanran.(山下継一)
1回目 2014/4/2 『山』
2回目 2014/4/16 『ご縁』
3回目 2014/5/21 『Back to 90’s』
4回目 2014/6/4 『滑り続ける』
 
 
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