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 COLUMN
surf columnSURF COLUMN 2008/8/20  
佐藤 誠(サトウ マコト)
7月6日生(CKBの剣さんと一緒) 株式会社サンコー代表
07年4月九十九里一松海岸に、ウエット工場「BPD.BeachPleasureDeveloper」始動。BeWET/Delphiのほか、OAKLEY/PATAGONIA/HURLEYなどカリフォルニアブランドのウエットプロデュースを手がける。BPD屋内には、東京で閉園となった幼稚園の床材を移築した多目的室があり、サーフレクチャーや地域活動の拠点に使われている。現在、BeWETと代官山UNICEがコラボしたSUMMER_FESTA主催。
1回目 2008/7/16 『サーフィンしたいシンドローム』
2回目 2008/8/6 『ウエットスーツの暖かさについて考えようと思う』
3回目 2008/8/20 『SURFDRYの功罪』
4回目 2008/9/3 『最高のWETSUITSを提供する "HEART"』

『SURFDRYの功罪』

近年、冬を暖かくサーフ出来るアイテムとして
サーフドライスーツ(以下、単にドライと呼ぶ)の台頭が目覚ましい。
従来の濡れるウエットスーツと比べれば、
サーフ後すぐに乾いた身体で一服出来る快感は、
冬のサーフィンを全く新しいイメージに変えてくれるだろう。

確かに、厳冬期のサーフィンには、凍てつく水を被るだけの勇気がいる。
人は少しでも暖かさを求める。
振り返れば、ほんの少しでも多くの「暖」をとる欲求は、
海で生きて来た「海女達の夢」でもあり「悲願」であった。

50年代、クロロプレーンゴムによるオールラバーのウエットスーツが発明され「海女の夢」が実現した。
60年代、表面にジャージをボンディングする技術が開発され、
広くウエットスーツがマリンレジャーに普及し、手先の器用さで、
採寸から型紙の製図、そして優れた縫製技術により、
以来、カスタムメードのウエットスーツは日本のお家芸となった。

ドライスーツの歴史は、19世紀初頭のヘルメット型潜水服に遡るが、
ここではクロロプレンゴムで出来た独立型のドライについて触れたい。
70年代、レジャー向けダイビング用ドライが開発された。
ドライスーツの機能の鍵は「防水」と「エアー圧力の調整」である。
保温性は、インナーによるところが大きい。

ダイビング用ドライスーツは、水深に関わる「水圧」と「浮力」の相関関係となり、
高度なエアー圧力調整技能が必要となる。
ダイビング用のそれは、ここでのテーマではないので割愛させていただく。
21世紀のサーフドライは、
そうしたダイビングドライで蓄積されたノウハウの上に成り立っている。とだけ触れさせていただく。

さて、サーフドライであるが、やはり「防水」と「エアー圧力の調整」が重大である。
このことが、広くサーファーに知られていないことを危惧している。
防水は、メーカー各社の技術によるが、エアー調整はサーファー自身の取り扱いとなる。
小さな水漏れは直ちに事故にはならないが、エアーを甘く見ると重大な事故に直結する。

サーフドライ内の温度は、着用直後と沖合に出た時では異なってくる。
エアーは、気体なので体温で膨張し、水温で収縮する。
つまりサーフドライスーツ内のエアー体積は、内外の温度環境で常に変化する。
ここに大きな落とし穴がある。

エアー調整は、3つの段階がある。
まず着用時にかがみ込み余分なエアーを逃がす。
次に入水時さらに調整する。
そしてサーフ時に前述の温度環境に合わせてドライ内のエアー量を調整する必要がある。
この調整方法をマスターしないうちに着用する事は非常に危険だ。

ドライは万能ではない。
ファスナーの手入れを怠れば砂を噛んでパンクし冷たい海水が一気に流入する。
巻かれてエアーがブーツに偏れば浮き袋となって逆立ちになってしまう。
ドライ使用時にはパートナーの協力が不可欠だ。
扱いを誤れば、死にも至る危険が伴うことを知って欲しい。

エアー調整が適切でない状態で波に巻かると、逆立ちの危険ばかりでなく、
過度なエアー量が一気に背中に回り、必要以上の浮力がドライファスナーを破ってしまう事がある。
いわゆるファスナーのパンクが起きる。

厳冬期にスーツ単体では
浮力と保温力が小さいドラースーツ内に海水が流入したときのことを想像して欲しい。
急激に体温が奪われ、かつ重量が増え、浜では歩く事も出来なくなる。
そのような事故を回避する為に、メーカーは取り扱いと危険性を示し、
販売店は、十分にその危険をお客様に説明納得の上で販売する責任がある。

サーフドライは快適である。
これまで冬を避けて来た熟年、あるいは女性サーファーに門戸を開くアイテムであることに疑いは無い。
しかし、正しい知識と技能の伝達、
また安全な環境下での使用が必須であることを我々メーカーは伝えなければならない。
販売店とメーカーが一体となり、安全なサーフドライ市場を形成して欲しい。






surf column佐藤 誠(サトウ マコト)
1回目 2008/7/16 『サーフィンしたいシンドローム』
2回目 2008/8/6 『ウエットスーツの暖かさについて考えようと思う』
3回目 2008/8/20 『SURFDRYの功罪』
4回目 2008/9/3 『最高のWETSUITSを提供する "HEART"』
 
 
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