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skate columnSKATE COLUMN 2013/5/22  
小島 秀彌
東京都中央区築地 1971年12月29日水曜日生まれ スケート歴27年
スケートボードと出会った地元横浜にて、FABRICというお店をやりながら
日々スケートボードと向かい合っております。
FABRIC http://www.fabric045.com/
FABRIC blog http://blog.fabric045.com/
所属:Jack Knife Boyz・KD・High rollers・kikugawaニイハオ・横濱猫会・FABRIC
1回目 2013/5/8 『スケートボードがしたい』
2回目 2013/5/22 『スケートボードが欲しい』
3回目 2013/6/5 『スケートボードが楽しすぎてサイコー』
4回目 2013/6/19 『スケーターのスケーターによるスケーターのためのスケートショップ』

『スケートボードが欲しい』

親の心子知らずとは良く言いますが、子の心もまた往々にして親は理解してくれません。
父親が買ってきてくれたものを、あっけにとられ何度見直しても明らかにローラースケート。
ローラースケートはスケートボードでは無い。
「俺は板が付いてるほうが欲しい!」といったのですが、
「あーあれはサーフィンやる人用だから」と言って全く聞き入れてもらえません。
それならサーフィンをやろうと思ってみても、
小学生のお小遣いでは敷居が高くもうローラースケートするしかない。
プラスチック製の硬いウィールは凄まじい音をたてて転がり、
近所の坂道で滑ってはみたものの、
そこの坂には「チビ」って言う名前の大きな犬がいて、
普段はおとなしいのにローラースケートに反応して全開で吠えまくり、かなり気まずい。
自分がやりたいこと以外には全く意識が向かない性格なので、
残念ながらローラースケートはすっかり飽きてしまいました。

丁度そのころから第一次スケートブームにも陰りが出始め、ローラースケートリンクも閉鎖され始めました。

70年代横浜駅前ハマボールの屋上にあったスケートボード用のボール(写真は伴野氏私物)

この角度はボールと言うよりも、むしろクレイドル(写真は伴野氏私物)
ハマボールの写真が残っているのは奇跡としか言いようがありません。
この写真を提供してくれた伴野氏曰く、
「最近のランプは垂直じゃないから、ターンが難しい」とおっしゃってました。

80年代に入るとすっかりブームも去り、
スケートボードを取り扱う店やスケート用のボールがある施設はほぼ完全に無くなってしまいました。
タイムリーなことに、
丁度その当時発売されたファミコンにもれなくはまったり、
風見しんごの影響でブレイクダンスをしたり、
部活なども始めたのですがどれもしっくりこなくて長くは続きません。
完全に下火になったスケートボードの唯一の情報源は、
サーフィン雑誌の中にあるほんの数ページのスケートボードコーナーと、大きな本屋さんの洋書コーナー。
いつ発売されるかもスケートの記事が載っているかも分からない雑誌を、
暇があれば本屋に通い自分の嗅覚を信じ直感で見つけ出していました。
もうそうするしか無い。

中学生になるとお小遣いも増え、友人と映画を見に行く機会が増えました。
ジャッキーチェンの映画を見たり風の谷のナウシカを観にいったり、
大画面の迫力にはまっていったのですが、そこで人生を変える衝撃的な出会いが!
1985年「Back to the Future」第1弾の上映です!
マーティーマクフライと言う高校生が、デロリアンに乗り過去にタイムスリップする内容の映画です。
内容も非常に面白いのですが、なによりも主人公の乗り物がスケートボード!!!!
ピンクと黒の今まで見たこともない形のスケートボードに乗りハイスクールにプッシュで通学し、
学園祭でチャックベリーを演奏し金髪のチャンネーにモテまくる!

完全にやられました。

もう止まりません。

当時横浜にはスケート専門店も無く、
どこでなにをしたらデッキを買えるのかもさっぱり分からなかったので、
唯一の情報源である本屋を何軒も廻り、とうとう見つけた本がこれ

中を見てみると、今までのサーフィン型の板では無く、
Back to the Futureに出ていたようなぶっとくカラフルな板がここぞとばかりに載っていて、
中でも日章旗に「HOSOI」と書いてあるデッキが意味も分からず最高にかっこいい。
が、めちゃくちゃ高い!
コンプリートで49,800円!
中古の原チャリ買えるじゃねーか!
中学生のお小遣いでは完全に無理だし、
ローラースケートとスケートボードの違いが分からない親なんて頼れません。
しかしそんなことではあきらめません。
本を買ってから、イメージは膨らむ一方。
もう我慢できません。
自分の足でスケートボードを売っている店を探しまくり、
自分の嗅覚を信じサーフショップを探したり、
その間にしっかり親から貯金の下ろし方を聞き出し買う気120%。
そうしているうちに風の噂で
「去年、西口のデパートの前で大会やってたよ。」と言う情報が入ってきました。
もしかしたらそこに売ってるかも!
そのデパートは横浜市で一番万引きと恐喝が多いデパートで、
全校集会で中学生は行ってはいけない場所と言われていましたが、そんなことは関係ない!
即効でそのデパートに行き、それっぽい店が無いか1階から順に隅から隅まで探索し、
2階・3階と上がっていってもそれらしいものは無い、
あきらめかけていた最上階!
エスカレーターを上ると何か独特の甘い香りがしてきて
上を見上げるとそこにはまぎれも無くスケートボードが!

これだ!

ダッシュで駆け上がり、
緊張しながら店に入ると
見たことも無いデッキが並んでいて
そのデッキにはバカでかいガイコツが!
超かっこいい!
今までの木目でサーフィンみたいな形ではなく、
魚のようにテールが広がり鮮やかなプリントが施されていました。
映画で見たやつです!
もうかっこ良過ぎてここにあるの全部欲しい。
しかしわずかにお金が足りない!
今思えばスキーとサーフィンの片隅にあった小さなスケートボードコーナーですが、
私から見たらそこは紛れも無くスケートショップ。
欲しくて欲しくて毎日通い、立ち見のまま店のビデオを暗記するまで見て、
何が一番良いのがじっくり検討し、そうしているうちにお店の人も私の顔を覚え、
「来週からセールだよ」の一言!
ツモ!
とうとうこの日が来ました、だいぶ長かったです。
Back to the Futureの影響・家庭用ビデオデッキの普及、
81年のTHRASHERの創刊などがかさなり、
世界的にスケートボードの復活とともにストリートスケートの確立。
今思えば、サーフィンの延長線にあったスケートボードが、
70年代のスケートパークの閉鎖とともに全く違う遊びとして新しく誕生した瞬間でした。

マーティーマクフライの影響は偉大です。

skate column小島 秀彌
1回目 2013/5/8 『スケートボードがしたい』
2回目 2013/5/22 『スケートボードが欲しい』
3回目 2013/6/5 『スケートボードが楽しすぎてサイコー』
4回目 2013/6/19 『スケーターのスケーターによるスケーターのためのスケートショップ』
 
 
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