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 COLUMN

skate columnSNOW COLUMN 2007/9/5

 
西田 洋介 1970年12月1日 36歳
プロスノーボーダーとしてのキャリアの後フリーライダーとしての活動を展開。
TWELVE、NPA  RAS RABELのディレクター、NPO法人X-SPORTS CLUBの理事としてキッズキャンプの開催や植樹などの環境問題にも取り組む。また今年の3月に冬の日本を舞台に仲間達と共にサーフィン、スケート、スノーボードをしながらのキャンパーでの旅をNY在住のカメラマンが納めた5000キロにも及ぶドキメンタリーロードトリップムービー”JOURNEYS"にディレクターとしての参加や毎月最終土曜日に開催するイベントFOCUS ALLを企画するなど多方面での活動も展開している。
1回目 2007/8/22 『JOURNEYS』
2回目 2007/9/5 『FOCUS ALL』
3回目 2007/9/12 『FREE RIDE』
4回目 2007/10/3 『WE ARE ALL ONE』

『FOCUS ALL』

今から約20年前、東京生まれ東京育ちの野球少年だった僕は杉並区の高校に入学するとやがて野球への情熱も失い、都会での華やかな世界に心を奪われていくようになりました。バブル全盛の時代だった80年代後半、高校生だった僕は毎日のように学校帰りにコインロッカーから私服を取り出し、渋谷駅のトイレで着替え、仲間達と街に繰り出していたものです。パーティに喧嘩、ナンパと思春期の僕らのパワーや情熱を発散してくれる何かを求めて毎日のようにコンクリートジャングルの裏路地を彷徨っていたのでした。

そんな生活が続いた17歳の冬、仲間達と行った志賀高原へのスキー旅行がきっかけで初めてスノーボードを目撃することとなったのです。その頃はまだスノーサーフィンと呼ばれていたそのなんだか良くわからない遊びに興味を持ち、”これは絶対モテルだろ”という不純な動機でしたが都会では決して味わえないその自由な感覚と世界観に興味を覚え、その翌年には大学の学生連盟に入部、初めてのローンでスノーボードを購入し、そしてその冬にはスキー場のレストランの住み込みバイトに申し込みスノーボードに明け暮れていったのでした。
しかし当時のスキー場はなぜかスノーボード禁止のゲレンデがほとんどで当然僕らが住み込みをしていたスキー場でもリフトには載せてもらえないといった状況だったのです。仕方なく僕たちは毎晩ナイターの終了した真っ暗なゲレンデをボードを担いで歩いて登り完全な自己流の滑り方で滑っていたが僕のスノーボードの始まりでした。
それから数年後スノーボードも少しずつ認知され、滑走可能のスキー場も序々に増えていき、やがてスラロームのコンテストなども開催されるようになり、そしてハーフパイプやワンメイクといったフリースタイルが生まれスキーではないスノーボードという独自のスポーツとして認知され進化していったのです。
そしてその頃には既にスノーボードという遊びに完全に魅了されていた僕は冬はほとんど毎日滑れるような環境を求めて仲間達と山に家を借り、オフの東京でのバイトで金を貯めてはまたサマーキャンプやニュージーランドに雪を求めて活動するといった生活が何年か続きました。
そしてついに25歳の時目標にしていた念願のプロにハーフパイプの種目で昇格したのでした。目標であったプロスノーボーダーとして活動することで大きく視野も変わりました。ワールドカップの参戦、海外への遠征や活動により日本から世界へとその視野を広げる事ができた経験は僕の人生の中でとても価値のある経験でした。しかしスノーボードを始めてから10年にも渡る経験を得て念願のプロとしての活動であるコンテストシーンからは早々に退き、プロとしての肩書きや収入も捨て自分自身でスノーボードや人生を追求し表現する道を選んで現在に至っています。プロとしてコンテストやメデイアでのパフォーマンスやスキルだけでの表現ではやはりスノーボードの真髄を伝えるのには限界があるのではないかと感じたからです。
そして今から10年前当時アメリカのシアトルで共に活動していた仲間達とTWELVEというスノーボードブランドを設立しました。海外の文化を吸収しそしてスノーボードのルーツであるサーフィンやスケートボードそして音楽やアートといったカルチャーとリンクしながら自分達の経験や感じたことをボードブランドという形で表現した方が一人のプロスノーボーダーとしてシーンに与える影響よりも大きいと考えたからです。しかしそのブランドを設立してから10年という月日が経った現在、東京を拠点にバランスの取れたライフスタイルとして確立させ横乗りの文化やスノーボードを追求してきた結果、今までと同様のスタンスやアプローチだけでなく他の方法でも発信していかなければならない時期にきているのではないかと感じてきています。オリンピックの種目や東京ドームでの興行と急激に独自の進化を遂げたきたスノーボードですが今から約20年前、コンクリートジャングルの裏路地を彷徨っていた頃に僕が出会ったスノーボードはもっとシンプルでただ楽しむだけの遊びでしたが東京という小さな世界から日本そして世界、地球規模へと視野や価値観を広げ、大切な仲間達や家族といったかけがえのない大切な物を僕に与え、自然の摂理や真の現実、人生の目標や充実感などバランスよく今の時代を生きるために必要な全てを僕に教えてくれたのです。このスノーボードという文化を通して得た経験とそこから始まった横乗り文化のすばらしさ、そしてその無限の可能性を時代をも超越した現代の多くの人達に発信していくためにも同じ志しの先輩達や仲間達とブランドの垣根やそれぞれの立場を超越して共に協力し合い、より大きな力でこの今の世の中に自信を持って文化として定着させていくことが現在の僕達の使命となっているのです。

そして今年ついにFOCUS ALLという一つのムーブメントが生まれました。全てに焦点を当てるというコンセプトのもとRIDERS EXHIBITIONとしてビジネスやブランド、ショップ、ライダーなどという立場や垣根を超越し、ライドで繋がる全てのカルチャーとリンクしてそのリアルな世界観を表現、発信していくことが目的です。毎月都内で開催する小さなイベントとしてスタートしたこのムーブメントですが少しずつ枠を広げ、今月の19日、20日に開催されるインタースタイルの展示会ではブースを設けて表現することになりました。このように共感してくれる多くの先人達やライダー達と共に力を合わせることで今後もその表現方法を発展させながら様々なアプローチでこの文化の奥深さを伝えていきたいとと考えています。
www.12snowboards.jp



snow column西田 洋介
1回目 2007/8/22 『JOURNEYS』
2回目 2007/9/5 『FOCUS ALL』
3回目 2007/9/12 『FREE RIDE』
4回目 2007/10/3 『WE ARE ALL ONE』
 
 
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