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 COLUMN

skate columnSNOW COLUMN 2007/9/12

 
西田 洋介 1970年12月1日 36歳
プロスノーボーダーとしてのキャリアの後フリーライダーとしての活動を展開。
TWELVE、NPA  RAS RABELのディレクター、NPO法人X-SPORTS CLUBの理事としてキッズキャンプの開催や植樹などの環境問題にも取り組む。また今年の3月に冬の日本を舞台に仲間達と共にサーフィン、スケート、スノーボードをしながらのキャンパーでの旅をNY在住のカメラマンが納めた5000キロにも及ぶドキメンタリーロードトリップムービー”JOURNEYS"にディレクターとしての参加や毎月最終土曜日に開催するイベントFOCUS ALLを企画するなど多方面での活動も展開している。
1回目 2007/8/22 『JOURNEYS』
2回目 2007/9/5 『FOCUS ALL』
3回目 2007/9/12 『FREE RIDE』
4回目 2007/10/3 『WE ARE ALL ONE』

『FREE RIDE』

スノーボードの可能性を追求していく過程で、やはり人が作る雪の人工物によるコンテストや競技だけが決してそのピークではなく、そのスキー場という圧雪し、計算して機械によって作られたアイテムを滑るというところから、その枠を超えナチュラルな自然の中で行うスノーボードこそ、その究極の集大成であるということに辿り着きました。人がコントロールをしていないまったく自然の雪山でのスノーボードには全てが凝縮さているのです。日々変わるコンディション、地形、雪質といった中での状況判断や経験そしてスノーボードのスキルとマインド。サーフィンが海や自然を理解することから始まるように、実はスノーボードも山や自然の摂理を理解するところから始まるのです。


僕が15年近くホームにしている谷川岳天神平は関越道の練馬インターから140kmと比較的関東県から近く、東京からスノーボードに行く場合は約1時間半で水上インターにまで到着します。東京から目と鼻の先にあるその群馬県のみなかみ町は山脈をまたぎ新潟県との境に存在する温泉で有名な山間の小さな町です。また豪雪地帯としても有名なこのエリアに仲間達と家を借り、そこから20分程山に向かって車を走らせ、谷川岳天神平スキー場のゴンドラを目指します。このスキー場は谷川岳の山頂へアプローチするゴンドラを登り標高1600m程の場所に位置する豊富な雪とパウダーの雪質を売りにしているリフト3本のローカルなスキー場です。この山をベースにスノーボードを始めた時から僕のスノーボードに対する価値観は変わっていきました。そして僕たちの滑っているスキー場のリフトを登ったその上から尾根を歩いていくその先には常に谷川岳のピークが立ちはだかっていたのです。毎日その美しい雪山を眺めていた僕は、当然のようにその足をスキー場からピークに向かって歩かせていくようになりました。あの谷川岳山頂から望む山々にスノーボードで自分のトラックを刻み込みたい。スノーボーダーとしては当然自然に生まれてきた感情でした。それからというものアメリカのマウントベーカー、カナダのウイスラーなどにも拠点をおきながら谷川岳をベースにスノーボードのフリーライディングの魅力に取り付かれ、やがてその意識と探究心は世界の山々にまで移っていったのでした。

FREERIDEというスノーボードの新たな可能性に魅せられ、世界中の山々を訪れました。アメリカ、カナダから始まり、日本とは季節が逆の南半球オーストラリア、ニュージーランド、そしてヨーロッパ各国、また情報もあまりないモンゴルやロシア、サハリン、カムチャッカ半島などの僻地にまでその活動範囲は広がっていきました。そこ見た数々の光景と経験は今の僕の価値観に大きな影響力を与えています。そして現在でも毎年冬になると東京から谷川岳へと足が向き、そこから日本中、そして世界中へとパーフェクトな雪と地形を求めて可能な限り旅をし続けています。また自然のサイクルと共通の価値観や感覚で繋がるサーフィンと共に日本特有の四季を感じながら東京での生活と海、山といった自然の摂理とのバランスを模索し続けています。おそらくこの先もこの海、山への探究心は終わることはないのだと思います。2度と同じ日がないのと同じように完璧なコンディションや環境も二度とはこないのです。そしてその結果、人間がコントロールすることのできない自然を相手に行うサーフィンやスノーボードはいくらうまくなってもそこにゴールや終着地点などは存在しないのだということに行き着いたのです。

現在の情報社会と呼ばれる世の中で、人間がコントロールしている都会での生活や世の中の流れ、人間の創り出している文化という僕たち人間が暮らしている現実と地球環境を含めた自然の摂理によって全てこの世界が成り立っているというもうひとつのリアルな現実。この2つのリアルな現実をバランスよく理解したライフスタイルこそがこのサーフィンやスノーボードといったバランススポーツから教えられた究極のメッセージであると考え、東京での生活、仕事、家庭、友達とのバランスなどを保ちながら自分自身のために人生を追求し続けています。サーフィンやスノーボードといった横を向いたライフスタイルも偏った価値観によってバランスを保てなければ転んでしまうということなのです。その両方の現実を偏りなく理解し実践する事が僕のバランスの取れた人生の目標にもなっています。比較的無宗教の日本に生まれ育った僕にとって気がつけばサーフィンとスノーボードが僕にとっての宗教であり信じる道になっているのかもしれません。
www.12snowboards.jp




snow column西田 洋介
1回目 2007/8/22 『JOURNEYS』
2回目 2007/9/5 『FOCUS ALL』
3回目 2007/9/12 『FREE RIDE』
4回目 2007/10/3 『WE ARE ALL ONE』
 
 
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