interstyle magazine
 COLUMN
surf columnSURF COLUMN 2013/3/6  
加藤忠幸
ビームス バイヤー
ビームスのメンズカジュアルを担当。本人のライフスタイルでもあるサーフとスケートへの
知識とセンスで、そのカテゴリーのバイイングを一任されている。自身で発行するジンも魅力的で
業界内の支持者も少なくなく、メディアでのコラム連載等、サーフ&スケートカルチャーの啓蒙に
日々精力的に活動している。また、バイイングの傍ら、家業の農業も手伝い地元鎌倉で地域に密着
したローカルな活動も行っている。
1回目 2013/2/18 『サーフィンは、自由でかっこいいものだから』
2回目 2013/3/6 『アイム ウォント トゥー マイ サーフボード。』
3回目 2013/3/19 『デビル西岡』
4回目 2013/4/3 『SSZ』

『アイム ウォント トゥー マイ サーフボード。』

かれこれオーダーしてから二年は経とうとしているだろうか。
送られてこない全額前払いのショートボード。
この感じ、実は初めてではない。
七年ぐらい前の話だ。鎌倉の大先輩にお願いして、お金も全額払い、今か今かと待っていたサーフボード。「時間は掛かるから」と言われていたけれど、その時も、3年は経とうとしていた。周りからは、「確実に騙されたね」と何度も言われた。全くもって送られてくる気配がない。
自分は年に一、二度はカルフォルニアにバイイングに行っていて、そのタイミングを利用してオーダー先を訪ねるしかないと感じていた。
そして、そのカルフォルニアへ。
その時はBEAMSのSURF&SK8のバイイングの師である窪と行動を共にしていた。窪さんは俺には、かなり厳しい、何度もバイイングに行っては喧嘩し何度もクビになりそうになっている。(決して仲が悪いわけではない。笑。リスペクトしている。)そんな先輩に、今回の件もかなり私的な用なのでなかなか言い出せないでいた。
明日にはサンフランシスコに移動してしまう。LAリサーチも終わり、今から仕事として出掛けるとしたら遅くまで営業しているショッピングモールのリサーチか、明日に備えてホテルに戻るか。自分はこのタイミングしかないと感じ。「実はお金を全額前払いし、3年間送られてくるのを待っているサーフボードがあります。ここから、そう離れていないところに住んでいる方にオーダーした板です。ドックタウンのオリジナル、ジェフ・ホーによるゼファーサーフボード、ジェフ・ホーさん家に一緒に来てくれませんか。。。」
窪さんは速攻で「勿論だよ」
そして、先輩から聞いていた住所の場所に向かった。
とりあえず家の前に行き、家に明かりがついているのでインターホーンを鳴らすことにした。すると年を取った女性の方がドア小窓越しに「どなた?」的なことを言っている。
「マイ ネーム イズ カトウ」
「アイム フロム ジャパン。アイム ペイド マネー フォー ミスタージェフホーサン。」
「アイム ウォント トゥー マイ サーフボード。」
そして、お金を送金した書類を見せた。
するとその女性は
「息子は今ここにいない。電話して呼んであげるから30分後にここに来なさい。」的な事を言っている。
一度、窪と自分は車に戻って待つことにした。外灯もほとんどない街での30分は非常に長く感じた。30分経とうとしたところだろうか、家の前に大きな車が止まり、大男が二人降りた。マジでデカい。そのまま帰りたいような雰囲気、チビリそうだった。が、窪の行ってこいの合図。
で、イッたった。
髪とひげの長い大男、間違いないジェフ・ホーさんだ、
「マイ ネーム イズ カトウ。アイ ウォント ゼファーサーフボード。」
するとジェフさんは家の中に戻り、一本のサーフボードを持ってきてくれた。4フィンのクワッド、ボリュームのあるイーグルノーズ、カラフルなエアブラシの入った間違いない、「FOR KATO」のサイン、間違いない。
ジェフさんが、送りたくてもお前の住所がわからなかった的な、ことを言った。
涙が込み上げてきた。ついに手にしたんだ。人生初のオーダーボードがゼファーサーフボード。まるで、チョコバット買ってホームランを3回立て続けに出した。そんな、夢のような話だ。
先端まで続く十分なボリュームのイーグルノーズ、ソフトなレールでありながらパキッとした感じとボテッとしたウイングフィッシュのテール。今にも動き出しそうな感じだ。すでに、目から流れた涙がほっぺを通過し唇に達していた。ショッパイ。そう海を感じた。早くコイツを鎌倉の海にぶち込みたくなった。本当に嬉しかった。このときは本当にラッキーだった。
そんな事実が今では夢のように感じる。周りからは「あの時はホントラッキーだったんだよ。お前バカだなぁ・・・」と。
そして、あの感動が忘れないでいる俺は同じ間違いをしている。
お金を全額払って、送られてくるはずの、サーフボードを待っている、今度は間違いなく住所も伝えている。ただ、まだサーフボードは送られてきていない。待って3年目に突入する。ただ俺にとっては間違いなくマジックボードなのだ。
ジェフさんが一本一本削りだし、几帳面な日本人では非常に困難な感性が爆発したような全開なエアブラシ。そしてオーラが出ているサーフボード。
全てがビンビンくるのだ。
馬鹿は一生治らない。サーファーにとってサーフボードは宝物なのだ。


surf column加藤忠幸
1回目 2013/2/18 『サーフィンは、自由でかっこいいものだから』
2回目 2013/3/6 『アイム ウォント トゥー マイ サーフボード。』
3回目 2013/3/19 『デビル西岡』
4回目 2013/4/3 『SSZ』
 
 
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