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surf columnSURF COLUMN 2013/6/19  
takuya tappy yoshikawa
12才から、サーフィンを始め、ファーストシェイプは17才。
途中でグラフィックアートを学ぶためにアートスクールへ。
十年のブランクの後、三十才の時にボードビルディングの道に戻り今に至る。
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patagonia. guest shaper
1回目 2013/6/19 『ガレージビルダーの功罪』
2回目 2013/7/3 『好きなことをやり続ける』
3回目 2013/7/17 『ピートとの出会い』
4回目 2013/8/7 『相棒』

『ガレージビルダーの功罪』

初めまして。
前回のyutaからこのコラムを引き継ぐことになりましたサーフボードビルダーのtappyこと吉川 タクヤです。
今回は自分とサーフボードビルディングとの関わりから、現在の状況を少しお話させてもらいたいと思う。
かつてサーフボードビルダーになる方法はというと、でかいカンパニーか工場に入って修行してほんとにサーフボードを作りたいっていう一握りの人がなるか、有名なプロサーファーがその後シェイパーに転向するという2つの道しかなかったんだよね。
僕はいま40代半ばだけど、自分たちの世代が昔スタイルで工場で修行した最後の方の世代だと思う。僕は湘南で育ったし、とにかく海に入りたかったから、小学生の頃から工場に通ってそこのシェイパーやファクトリーマン達にサーフィンに連れていってもらっていた。そういう環境で育ったことはとてもラッキーだったと思う。その後自然な流れで自分も工場で働き出して職業ビルダーになったわけだけど、同時にサーフィン以外のカルチャーにもハマって、っていうのは前の世代を否定して乗り越えてゆくようなカルチャー、つまりパンクロック、ニューウェイブ、スケートボード、ポップアートみたいなアヴァンギャルドな動きにとても影響を受けた。そういう部分は今サーフボードを作る上でとても活きているよね。
ここ十年くらいかな、日本でも「ガレージビルダー」と呼ばれる人が増えてきていて、そのこと自体はとてもいいことだと思うんだけど、残念に思うことも多々ある。昔に比べれば材料も簡単に手に入るし、情報だってすぐ集められる。時間とお金とインターネットがあれば誰でも「最先端」のサーフボードを作れる環境になってきていて、ボードビルダーへの間口はとても広がった。だけど作り上げられたものはというと、有名なブランド、流行のデザイン、ちょっと事情通の人ならばもう少しマイナーなところからチョイスした「センス」のあるサーフボード。ここ最近は、板はどんどん短くなって厚くなってきてるけど、なにかが薄っぺらく見える。
そういう現象を象徴しているのが日本の「フィッシュフライ」なんじゃないかな。
想像するに、カリフォルニアやオーストラリアで流行っているデザインや、これから流行りそうなものを取り込んで、俺ってセンスあるっしょ的な感じで持ち寄って自己満足に浸っているんじゃないだろうか。
機能ありきのデザインのはずが、ガワだけそれらしく持ってきて、その内実はと言うと…。
同じガレージビルダーでもアメリカのそれは本物のサーフカルチャーというものの中で育つから、その背景は日本とは全く違う。そこには文化的な深さがあるし、なにより彼らはオリジナルに囲まれて育つ。オリジナルなシェイパー、オリジナルなサーファー、そしてオリジナルなサーフボード。
誤解を恐れずに言うと、ここ最近の日本の状況はただファッション的に「ガレージビルダー」という言葉、肩書きに酔っているようにすら見える。
70年代半ばにデヴィッド・ボウイが積極的にソウルミュージックを取りいれた時、自分の音楽を「プラスティック(偽物の、まがい物の)ソウル」と呼んだけど、それはやっぱり、ソウルミュージックに対する敬意と表裏一体の、「白人の自分がどれだけ黒人のまねをしてもどうしても本物になれない」みたいなジレンマをあえて自虐的に表現したゆえに出た言葉だったわけだよね。そういうどこか後ろめたさ、恥ずかしさみたいなものって忘れてはいけない気がする。
サーフィンだってそもそも借り物のカルチャーなんだし、「最先端」、「クラシック」、まぁ何でもいいけど流行のデザインを取り入れてそれを我が物顔で誇示しても結局本物にはかなわない。
趣味でボードビルディングを楽しむということなら全く問題ないと思うんだけど、今じゃそういうボードが各地のショップのご当地ブランドとして売られてしまうという現状がある。当然サーフボードは価格破壊を起こすし、何より見た目だけのサーフボードが増えていってしまう。「ガレージビルダー」は増えたけど、カルチャーとしては薄っぺらになっていってしまうなら本末転倒だ。それでは本当のビルダーは育たない。
どうせやるのだったら、今までにないような革新的なことをやるべきだし、それこそがしがらみや伝統に縛られていないガレージビルダーのメリットだと思う。
もちろん僕が知らないだけで、ファッションではなくパッションでもってボードビルディングに取り組んでいるガレージビルダーもいるとは思うんだけどね。
プラスティックソウル時代にボウイの作った「Fame」や「Golden Years」、「Station To Station」が今では名曲とされているように、借り物のカルチャーだからこそオリジナルの人たちにはない新しい視点で、ガレージビルダー達と共にサーフボードビルディングを追求していきたいね。

surf columntakuya tappy yoshikawa
1回目 2013/6/19 『ガレージビルダーの功罪』
2回目 2013/7/3 『好きなことをやり続ける』
3回目 2013/7/17 『ピートとの出会い』
4回目 2013/8/7 『相棒』
 
 
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