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surf columnSURF COLUMN 2014/9/17  

稲田 邦匡
1964年千葉市生まれ 南房総市在住 千葉大学医学部および同大学院卒業
日本プロサーフィン連盟(JPSA)オフィシャル・サポート・ドクター
日本整形外科学会認定整形外科医
日本体育協会公認スポーツ・ドクター
南洲会 勝浦整形外科クリニック副院長
国際スポーツ医科学研究所(ISMI)監査
競技スポーツとしてのサーフィンの発展のために尽力しています。
1回目 2014/8/20 『サーフィン・ドクターとしての「私とサーフィン」』
2回目 2014/8/27 『競技スポーツとしてのサーフィンの発展性について』
3回目 2014/9/2 『サーフィンの競技特性とスポーツ傷害
「どうしたらパフォーマンスがアップするのか?」』
4回目 2014/9/17 『サーフィンと・・・』

『サーフィンと・・・』

コラムも最終回となりましたが、
私、サーフィン・ドクターのブログ http://blog.goo.ne.jp/surfing-doctor1792 と、
FBページ https://www.facebook.com/surfingdoctor.inada もご覧ください。
今回は、サーフィンに関する「サーフィン競技以外のこと」を書きたいと思います。

①「サーフィンと原発」
東日本大震災で被災した宮城県、福島県はもとより、茨城県、千葉県などの地域のサーファーは、福島第一原発からの放射能汚染水の垂れ流しの影響を直に受けているので、誰しも原発問題には反対であろうと思います。プロ・サーファーの木下デビットさんらは、震災のだいぶ前から原発反対の抗議活動を行ってきました。震災後、実際に全ての原発が稼働停止していた時でも、日本中が節電に努力して危機を乗り越えました。ところが、現在では福島原発のニュースは殆ど報道されなくなり、街には再び夜間の無駄な明かりが煌々と輝いて、人々は原発のことを忘れてしまったかのようです。ましてや、この期に及んで原発再稼働や原発の海外輸出などを進めている日本人がいることは、世界から見たら信じられない行動でしょう。
原発が必要な理由として、アベノミクスでの経済活性化と、震災復興と東京オリンピックを見据えた建築ラッシュのため、大量のエネルギー供給が必要であることは理解できます。また、既存の原発一基を廃炉にするためには、国家の経済をも混乱させかねないほどの莫大な経済的リスクを伴うという裏事情もあるようです。
しかし、日本はハイブリッド・カーや高性能な家電製品の開発など、世界一の高い技術力を持っている国ですから、原発を使わない電力による製品製造、建設技術を生み出すべきであり、東京オリンピックは100%クリーン電力で運営するくらいの技術革新を目指すべきでしょう。
ただし、そうした当たり前のようなことでも、これまでの伝統を重んじ、改革や革新には慎重な日本人では、政治家が重い腰を上げるまでにはまだ程遠いばかりか、利権などの面から逆に原発が再稼働されかねないのが現実です。しかし、スリーマイル島やチェルノブイリの例を見ても、一度事故を起こした原発の処理には莫大な手間と時間がかかることが分かっているのですから、原発再稼働の是非を議論する前にまずは福島第一原発をどうやって無事廃炉にするかを議論するべきでしょう。目先の経済成長も大事ですが、日本人が暮らす国土が失われ兼ねないずっと本質的な大問題に、日本の政治家や有識者とされる人たちはいったい何をやっているんでしょうか。
我々サーファーが大切にしている「海」に、勝手に放射能汚染水が垂れ流されていることに対して、我々は色々なメディアで原発反対を訴えかけ、行動するべきでしょう。


②「サーフィンと犬」
サーファーは自然を愛し、生き物を愛する人が多いので、犬や猫を飼っている人も多いと思います。私にもタロウという名前の雑種の愛犬がいて、前の飼い主から引き取ったのですが今ではすっかり我が家の一員です。また、飼い主に散歩されている犬は、みな本当に嬉しそうな顔をしているもので、見ていてこちらも心が和みます。

しかしながら、世の中には飼い主の飼育放棄や飼い主とはぐれて、保健所で殺処分になる犬猫が後を絶ちません。私の住んでいる近所でも、(頻繁に)捨て猫や(稀に)捨て犬を見かけます。我々もこうした捨て猫や保健所にいる犬たちを保護して、里親を探す活動を応援していますが、福島で飼い主と離ればなれになった被災犬や、飼い主の飼育放棄により長年繋がれたままの犬、刃物で刺されてもじっと我慢した盲導犬など、世の中にはものすごい数の不幸な犬猫が生きています。
保健所に収容された犬は、5日目にガスで殺処分されますが、大型犬は死にきれないこともあると聞きます。ボロボロの姿の捨て犬だって、かけがえのない一つの命です。簡単に捨てられる生まれたばかりの仔猫だって同じです。飼い主は、飼えなくなったら里親を探す団体に相談すべきであり、仔犬や仔猫が生まれて困るならきちんと去勢手術をすべきであるし、生き物を飼う以上当たり前の責任を果たさなければなりません。しかし、中には何処からか勝手にやって来て、何となく飼っている犬や猫が子供を産んでしまったというケースもあるでしょう。そうした例のためには、行政やNPOが広く窓口を開いて、仔猫・仔犬を収容し里親を募集するべきでしょう。
ドイツでは犬を飼うことに厳格な法律があるようですし、アメリカでは動物虐待に対してASPCAという動物警察が犯罪として取り締まっています。日本は先進国とは言いながら、スポーツ振興やペットの飼育管理などに関しては、本当に時代遅れの国であるといつも思います。
ペット・ショップで可愛い仔犬や仔猫を買うのもいいですが、本当に犬や猫が好きな方であれば、是非とも里親募集の対象となっている保護された犬猫を引き取って欲しいと思います。SNSの発達した今では、各地の保健所や様々なNPOのホームページで簡単にそうした犬や猫を探すことが出来ます。こうしている間にも、たくさんの犬や猫たちが命を奪われていると考えると、本当に悲しくなります。
参考:日本動物虐待防止協会(日本SPCA):http://www.nipponspca.com/about.html


③「サーフィンとタバコ」
禁煙が当たり前の現代社会において、いまだにタバコを吸うサーファーを多く見かけます。そんな私にとっても、サーフィンを始めた20歳のころ、アフター・サーフに吸う一服は格別なものでした。しかし、私はその後の禁煙努力により、今ではタバコの臭いと煙は大嫌いになりました。
日本は先進国の中では韓国に次ぐ喫煙率の高い国であり、残念ながらプロ・スポーツ選手でもいまだに喫煙者はいるようです。
(WHO地域別喫煙率)
国際オリンピック委員会(IOC)では、世界保健機関(WHO)との間で、オリンピックをタバコの煙の無い環境「スモーク・フリー」で行うことを決め、近年のオリンピック開催国では「受動喫煙防止法」が制定されてきました。しかし、2020年に「おもてなし」の精神でオリンピックを開催するはずの日本では、いまだにその法整備がされていません。タバコは、ニコチン依存症の人にとっては有益なのかもしれませんが、他人の体に及ぼす有害性は犯罪に等しいと言えます。特に、いまだに根絶されない飲食店の店内での喫煙は、受動喫煙防止法で厳しく取り締まるべきです。
また、プロのスポーツ選手というのはプレイする姿だけでなく、取材やインタビュー、ファンとの交流の様子など行動の全てが「見られる」職業であり、それがファンに夢と感動を与えるのですから、喫煙などというアスリートに有るまじき行為は絶対にするべきではありません。サーフィンの場合は、スタイルを重視する人たちは喫煙も「スタイル」と考えているのかもしれませんが、競技サーフィンの真のコンペティターにとっては、タバコはドーピングに等しいタブーです。大会会場は、もちろん全面禁煙にするべきです。
日本から喫煙者を無くす対策として、タバコ税を大幅に増税してタバコの価格を高くするべきです。実際、ノルウェーやイギリスでは、タバコ一箱が1000円以上するようです。

また、喫煙所以外で喫煙している人の写真を投稿するサイトを作り、投稿された犯人には高額な罰金が科せられるとか、喫煙者の医療費負担を高くするとかいう案もいいでしょう。
ひとまず、とにかく早く「受動喫煙防止法」が制定されて欲しいものです。
参考:厚生労働省「最新たばこ情報」:http://www.health-net.or.jp/tobacco/front.html

surf column稲田 邦匡
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3回目 2014/9/2 『サーフィンの競技特性とスポーツ傷害「どうしたらパフォーマンスがアップするのか?」』
4回目 2014/9/17 『サーフィンと・・・』
 
 
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