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INTERSTYLE 2020
開催:2020年2月18日(火) 〜 2月20日(木) 
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コラム

伊藤雄和『第2回 しゃかりきコロンブスになれなくて』

2019/08/21 tag: 伊藤雄和

髑髏、蛇、蜘蛛、蜘蛛の巣、鷹、鮮血、蠍、グロモチーフに蛍光色のド派手な配色でおどろおどろしくデザインされた板に四つの車輪の付いた乗り物の様なものがローラースケートコーナーの隅で申し訳なさそうに小さく展開されていた。まるで魔窟に迷い込んだ仔羊の様な足取りで私は近づいて行った。戦隊ものや特撮、おまけシール付き菓子などでも悪役の方が好きだった私は息を飲んだ。そこにある凡てが禍々しく好み中の好みであったのだ。この僥倖めいたファーストコンタクトでもう脳中にはローラースケートの存在は消え目の前の車輪付き板に夢中になっていた。「おじいちゃん、僕、これにする!」
この時デザイン性の毒毒しさに惹かれたのは勿論なのだが、幼い私にはローラースケートは難しく、あの安定感の無さも知っていたし車輪付き板を観てこっちの方が簡単そうだし乗り物っぽさで言ったら断然こっちなので。新しい物に目移りしたというのも否めないが。
そして、大胆に鷹があしらわれ、タイヤ、その他の付属品(レールバーやテール、ノーズガード等)は赤のデーハーな車輪付き板をゲットしたのであった。

魔窟より無事生還を果たした私は早速に生家の隣の月極駐車場でライドオンしてみた所、思いのほか乗れる。板に乗り進む以外の概念が無いので只管に場内を狂った様に滑り、時には座り滑り、ウイリーしたりと兎に角楽しんでいた。懸念していた兄達に取られるのではないか?という問題も何度か貸せと言われたがあまり食いついていない様で難なくクリアー。のめり込みは更に加速して行き五時のチャイムの後も玄関前のコンクリートで滑り食後も電気を点けてライドオン。練習の甲斐ありみるみる上達し一人でチックタックや360ターンなども勝手に習得していた。その頃、隣接した月極駐車場のキャパシティでは最早、私の欲求や創造性を満たす事が出来なくなっていた。しかし、道路で乗ってはいけないと釘を刺されていた私はその駐車場から出る事が出来ずにいた。そんなある日学校で俺も持ってるから今度一緒にやろうよ!なんて事になりこの駐車場で一緒に滑る事になったのだ。

土曜日の午後、彼はチックタックでやって来た。距離でいえば2キロくらいを。平生、専ら一人滑りの私は初めての複数滑りに異常な楽しさを覚えた。しかも彼は私より僅かにキャリアが長く段差を降りたり飛び跳ねたりと独自の技を持っていた。幾度かのセッションを重ねたある日、彼が「面白い場所があるんだけど行かない?」道路へ出てはならないという縛りの中、その一言で私の自制心は崩壊してしまった。その場所はそう遠くない消防署の傾斜の付いた駐車場だった。「スゲーの見せてやるよ。」彼は傾斜の付いた20メートル程の距離を一気に下って行ったのであった。どんどん加速して行く彼の前にはなんと地上から30センチ程の高さのチェーンが!彼は更に加速する。危ない!と、その時、彼は宙を舞い車輪付き板はチェーンの下を潜り抜け彼は再び板の上に着地したのであった!私はキラキラした眼で「スゲー!どうやってやるの?教えてよ!」「最初は怖いけど慣れたら簡単だよ!先ずは平らなところでチェーンも無しで飛んでまた乗る練習だよ。」その日の内に板から離れ再び乗るまでの所まで来たがチェーンを前にすると怖い。アレに足が引っ掛けたらどうなるか想像つくしね。そして夕方、リトライを約束して帰路につくのであった。 

リトライ当日、一旦、何時もの月極駐車場で合流して少しアップしてから例の場所へ向かう。彼は躊躇なく何度も飛ぶ、そして成功する。しかもジャンプ時に身体を180度捻るという新技を見せつけてきたのだ 。「新技!」と少しシャクレ気味に言い放つ。悔しいというよりも少し腹が立って来た。勿論、自分では無く、シャクレ気味に人を見下す態度に。完全にこの空間、遊びのイニチアシブ取られる格好になってしまった。なんとしても成功させなければ、今後の学校生活迄でもイニチアシブを取られかねない。私は意を決して傾斜を滑り出した。少しでも躊躇してしまえばどうなるか解っている。そしてその時が来た。チェーン手前、私は躊躇無く飛ぶ、そして着地する。出来た!が、しかし傾斜に対し平行では無く真上に飛んでしまった為、着地時に板の後方に両足が乗ってしまっていた。重心は後ろに移る。強い力で上半身と下半身が逆方向に引っ張られる。抗う事なくアスファルトに叩きつけられた。肘はエグれ数カ所を負傷しその場に蹲ってしまった。一緒に遊んでいて負傷者が出た時、子供は冷たいのです。悪い事したのではないか、自分のせいになるのではないかとか思ってね。まあ、元来、駐車場から出てはいけないと言われていたのだから仕方ないが。「大丈夫?そろそろ帰らなきゃ」と半泣きの私を残し帰ってしまった。17時のチャイム迄はまだ少し時間があるがリトライする気にはなれず板に乗る気にもなれず手で持って帰路に着いたのであった。
爾来、車輪付き板に乗る事も少しずつ減り、世の空前のミニ四駆ブームが押し寄せると完全に乗らなくなっていた。あの時、私の心を鷲掴みにしたあのデーハーなグラフィックも雨晒しの日々を過ごし剥がれ掠れ、板には縦にヒビ割れが入り車輪周りの金具は錆びてしまっていた。主人を失ったそいつは粗大ゴミになるのを待つ。ありがとう。ごめん。30年前のお前との事忘れてないよ。  つづく。

Ito Hirokazu photo

 

伊藤雄和(いとうひろかず)プロフィール
東京を拠点に活動するロックバンドOLEDICKFOGGY(オールディックフォギー)ヴォーカル&マンドリン担当。東京を拠点に小さなライヴハウスから、大規模の野外フェスまで、幅広く全国規模での活動を展開中。ライヴのオファーも非常に多く、年間ライヴ数平均約100本。独特な楽曲と日本語による歌詞の美しさにより、ライヴを目撃した全ての観客を巻き込む今、注目のロックバンド。尚、自身もスケートボード愛好家でありメンバー、スタッフ、知人、友人に多数のスケート関係者を含む。

 

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