「できないをできた！に変える」
2017年兵庫県神戸市にある須磨海岸で須磨ユニバーサルビーチプロジェクトが発足した。
このプロジェクトの代表は、「元健常者、現障がい者」、交通事故で身体障がい者となった人。
そんな彼は、大事故の中、命が救われ、家族仲間に支えられたことは言うまでもなかったのだが、何より本人の気合いが一番ポジティブだった。
リハビリで訪れたオーストラリアで“ビーチマット”に出会い、車いすのまま砂浜を移動することができ「あきらめた海」に入った感動から、自分の生まれ育った須磨海岸にも同じような環境を作っていきたいとプロジェクトを始動した。
ライフセーバー、海の家の店主、神戸市の職員など様々な仲間が集まり、検証した結果、アメリカ製のビーチマットを導入することとなった。
「車いすの人は海水浴に来ませんよ」
と言われたこともあり、
「車いすで波打ち際まで行けないから、海水浴に来ないだけ」
と代表は伝え続け、仲間やボランティアメンバーと地道に活動を続けた。
そう、車いすだと砂浜に車輪が埋まってしまい、移動できない。
赤ちゃんのバギーにも車輪がついていて同じように立ち往生してしまうけれど、乗っている赤ちゃん自体が軽いので、ひょいと抱え上げることができる。
“ビーチマット”は、車輪用マット。
車いすでもバギーでも台車でも、砂浜での移動を容易にしてくれる。
砂浜だけではない！神社などの玉砂利や畑でも！！！
結局のところ、ビーチマットが敷かれていたら、私は必ずそこを通る。なぜなら、歩きやすいからだ。
私たちのアイテムは、大きく２つ。
“ビーチマット”と“水陸両用アウトドア車いす”
私たちが使っている“ビーチマット”は、１０ｍで約４０㎏の重さがあり、設置片づけが重労働であることは否めない。
一見、弱点かと思われるこの重労働は、人を集め、人の心を近づける効果があることに気づいた。
また、波打ち際まで行くことができたら、やっぱり海に入りたい。自分の車いすのままでは海に入ることができないので、“水陸両用アウトドア車いす”を使う。
自分の車いすから乗り換えてもらい、もう次の瞬間には海に入っている。
初年度、『障がい者の「できない」を「できた！」に変える』としていたキャッチフレーズ。
ひと夏を終え、障がい者の「あきらめていた海水浴」のできた！を増やすことができたのはもちろんだが、ユニバーサルビーチに関わった人たちにもたくさんのできた！がうまれたので、翌年からは、『みんなの「できない」を「できた！」に変える』に変更した。
道具があることで障がい者・健常者という明確な線引きは無くなり、それぞれが思い存分楽しむことができる。時には、線引きが必要な時もある。
線があるときに大切なことは、道具を駆使するだけでなく、人の心がそこにあるかどうかということ。
どうしてもクリアできないときには線（障がい）は出てくる。出てきたとしてもそこに人の心がある時には、その線（障がい）はクリアされていくのだと思う。
「障がい者」と言われたとしても、困っていなければ、そこに障がいは存在しない。
困るような環境に行かなければ、障がいは発生しにくいのだろうけれど、何か驚きや発見に出会ってほしいと思うので、過ごしやすい環境から時々外に出てほしいとも思う。出てほしいと思う以上、障がいをクリアする環境を作ることが私の役割だと思う。
しかしながら、私一人で全てのアウトドアシーンのエキスパートになることは無理なので、その道のプロたちとタッグを組みながらやっている。
そうすることで、私も自分だけでアウトドアを楽しんでいるよりも輝く世界を見ることができている。
道具は、クールに
人は、温かく
古川尚子 FURUKAWA MASAKO プロフィール
中学校教員からフリーに転向。
海や雪山などのアウトドアシーンで障がい者のサポートを行う。
ちょっとしたことを手伝いながら、共に楽しい時間を過ごす。
「誰かの心に残る時を共に過ごす」５M８まちゃ
INSTAGRAM：@macya_58
